登記に関するQ&A
不動産の登記はなぜ必要なのですか?
登記をする理由は、大きく分けると「自分の財産・権利を守るため」「他の人に迷惑をかけないため」の二つがあります。
土地や建物といった不動産は非常に高価な財産ですが、お金や貴金属のように、持ち歩いたり、金庫にしまって鍵を掛けておけるような大きさではない上、常に衆目にさらされています。もし、あなたの自宅を誰かが「あの家は自分のものだ」と偽って、第三者に売却してしまったとしたら、真の所有者があなたであることを何らかの形で証明しなくてはなりません。
そのような場合に備えて、不動産の所有者などの情報を、国が保管する公式の帳簿(今は電子データです)に記録しておくのです。これを登記記録と言います。登記記録があれば、その不動産の正しい権利者が誰かを証明することができます。このように、登記をしておくことによって、自分の財産や権利を守ることができます。
また、登記記録には、その不動産の所在地や大きさといった、物理的な「状態」についての情報も記録されます(この記録の部分を「表題部」と言います)。登記記録は、誰でも閲覧したり、写しを交付してもらったりすることができるため、もしこれらの情報が実態と違っていたときは、それを見た第三者に誤解を与えたり、混乱を生じさせるおそれがあります。その結果、不動産取引や工事、行政手続きなどにおいてトラブルを招きかねません。
したがって、正しい登記をしておくことは、「他の人に迷惑をかけないため」という目的もあります。このため、表題部の登記は、原則として、その所有者に一定期間内での申請が義務づけられています。
不動産の登記は義務ですか?
法律で義務づけられている登記と、そうでない登記とがあります。義務かどうかは、登記をする目的・理由(詳しくはQ1をご覧ください)と大きく関わっています。
まず、登記記録には、その不動産の所在地や大きさといった、物理的な「状態」についての情報が記録され、この記録の部分を「表題部」と言います。表題部は、どのような種類・大きさの不動産が、どこに存在しているか、という情報を、誰もが分かるよう公に示す機能がありますので、実態と異なる情報が記録されていたり、記録が漏れていたりすると、誤解や混乱をまねくおそれがあります。このため、表題部の登記は原則として、登記を申請する義務があります。
具体的には、次のような登記について申請の義務があります。(カッコ内は申請しなければならない原則的な期間)
・土地の地目変更登記 (地目が変わった日から1か月以内)
・建物表題登記 (新築した建物を取得した日から1か月以内)
・建物の表題部変更登記 (構造や床面積の変更があった日から1か月以内)
・建物滅失登記 (取壊しなどにより建物が滅失した日から1か月以内) など
一方、所有権や抵当権など、権利についての登記(この記録の部分を「権利部」と言います。)は、どちらかというと「自分の財産を守る」ことが目的であるため、国が義務づける性質のものではなく、また、義務づけられいなくても登記申請を怠る人は少ないため、原則として義務はありません。
なお、権利部の登記のうち、相続による所有権移転の登記は2024年4月から義務化されますのでご注意ください。(詳しくはQ4をご覧下さい。)
義務とされている登記(不動産)を行わないとどうなりますか?
不動産登記法に基づき罰せられることがあります。具体的には、10万円以下の「過料」が課せられます。
相続の登記はなぜ義務化されるのですか?
長い間相続の登記がなされず放置されていたために、不動産の権利者の数が膨大(数十人〜数百人)になったり、その中に行方不明者が生じたり、あるいは権利者が誰だか分からなくなってしまうなど、取引や各種の法的手続きができない状態になっている不動産が、あまりにも増えてしまったためです。
取引ができないということは、客観的には資産価値ゼロということになります。土地については、日本の国土面積の2割がこうした状態にあると言われ、もはや社会全体の経済損失になっていると指摘されています。
また、こうした不動産は、公共事業や各種インフラ整備のさまたげにもなっており、特に2011年の東日本大震災の時にこの問題が注目され、さまざまな法制度が変わるきっかけとなりました。
いわば、活用できない・資産価値の無い不動産が増えるのを防ぐためであると言えます。
相続登記の義務化 何に注意?
不動産の登記を自分で申請することはできますか?
できます。むしろ本来、不動産登記は、本人が申請することが原則であり、司法書士や土地家屋調査士が代理人として申請する場合でも、書面上、「申請人」は依頼者ご本人のお名前となります。
ただ、登記申請は、役所の窓口で行う手続きの中でも特に複雑でルールが厳格であり、しかも一生のうちにそう何度も行う手続きではないため、なじみが薄いという特徴があります。
そこで、ご自分での申請は大変だという方のために、司法書士や土地家屋調査士が代理で申請できるしくみになっています。
また、土地の分筆登記や建物の表題登記(新築した時の登記)など、測量・製図を伴う登記については、専門的な技術や知識が必要であり、土地家屋調査士に委託しないと困難である場合がほとんどなのでご注意ください。
登記に関する業務の一部分だけを依頼することはできますか?
できます。例えば、登記に必要な相続関係の書類を整えることや、測量・製図などを当事務所で受託し、申請はご自分で行う、ということも可能です。登記にかかるコストを抑えたいという方には、このような方法もお勧めです。
不動産登記にかかる費用は?
大きく分けて、「a 申請の準備にかかる費用」「b 申請代理にかかる費用」「c 登録免許税」の3つがあります。
a 申請の準備にかかる費用
申請の準備にかかる費用の額は、申請する登記の種類によってかなり差があります。
土地の分筆登記や地積更正登記など、測量・製図を要する場合に土地家屋調査士に支払い委託料が最も高額で、例えば、市街地にある一般的な大きさの住宅敷地ですと40万円〜60万円程度かかります。
測量・製図を要しない登記であれば、そのように大きな費用がかかることはありませんが、相続を証する証明書の添付が必要な場合、戸籍謄本や除籍、住民票等を取得するための発行手数料がかかります。また、それら証明書の請求も司法書士などに代行してもらうと、多少の料金が発生します。
b 申請代理にかかる費用
司法書士や土地家屋調査士に登記の申請を依頼した場合の委託料で、だいたい数万円ということが多いですが、内容により加算されることがあります。例えば権利の登記の場合、取引する不動産の価格や設定する抵当権の債権額が高額になると、その分料金が上がっていく場合が多いので、事前に司法書士に問い合わせる際には、それらの金額を伝えた方がよいです。
ご自身で登記を申請する場合は、この費用はかかりません。
c 登録免許税
登記や各種の登録制度を利用する際に国に支払う税金で、「登録免許税法」という法律で申請人に納税の義務が課せられています。
不動産登記にかかる登録免許税の税率は、「権利を手に入れた・確保した時の登記では高い」という特徴があり、例えば、評価額(固定資産税の評価額と同じ)1,000万円の土地の場合、売買による所有権移転の登録免許税は税率1.5%なので15万円、相続ですと税率0.4%なので4万円です。抵当権の設定の場合は、担保する債権額に税率を乗じる方法になります。
このため、権利に関する登記(権利部の登記)の登録免許税は、司法書士に支払う料金(b)よりもはるかに高額になることがよくありますので、事前によく確認しましょう。
これに対し、不動産の形状・規模や所在地などを記録する「表題部」の登記は低額で、例えば土地の分筆登記であれば、分筆後の筆数×1,000円しかかかりません。建物の表題登記や滅失登記など、法律で申請が義務付けられている登記については非課税です。
不動産登記申請を行う窓口は?
総務省の出先機関である「法務局」の不動産登記窓口になります。
法務局にも、規模の大きい順に「法務局」「地方法務局」「支局」があり、不動産登記の場合、その不動産の所在する市町村単位で、どの法務局(又は地方法務局、支局)が窓口になるかが決まっています。
例えば栃木県内の管轄は次のようになっています。
宇都宮地方法務局本局・・・宇都宮市・さくら市・鹿沼市・那須烏山市・上三川町・高根沢町
日光支局・・・日光市・塩谷町
真岡支局・・・真岡市・益子町・茂木町・芳賀町・市貝町
大田原支局・・・大田原市・矢板市・那須塩原市・那須町・那珂川町
栃木支局・・・栃木市・壬生町
足利支局・・・足利市・佐野市
小山支局・・・小山市・下野市・野木町
なお、二の市町村にまたがって建っている建物の登記については、登記の目的によって、どちらの市町村を管轄する法務局に申請してもよい場合と、申請先が法令で定められている場合とがありますので、当事務所又はお近くの法務局にお問い合わせください。
登記識別情報とは?
不動産の所有者、抵当権者など、「権利者」として登記がなされた人には、登記完了後に法務局から、その人だけが知ることのできるパスワードが発行されます。これを「登記識別情報」と言います。
登記識別情報は、次にその不動産を売却した時の登記など、「間違いなく権利者本人の意思かどうか」を確認する必要があるときに、権利者であることを証明するためのものです。
平成の途中までは、登記申請書の副本に法務局の「登記済」という印が押された「権利証」(登記済権利証)を所有していることが権利者である証明でした。しかし、平成20年に登記記録が電子化されたときに、それ以後行われる権利の登記においては、権利証ではなく「登記識別情報」が発行され、権利証の役目を果たすことになっています。
したがって、登記識別情報は、自分以外の人に見られることがないよう、厳重に管理する必要があります。登記識別情報を見られたということは、昔で言えば「権利証を盗まれた」のと同じ意味合いになってしまいますので、取扱いには十分に注意しましょう。
なお、電子化以前に発行された権利証については原則として今でも有効です。権利を手放すなどしていない限りは、引き続き大切に保管なさってください。